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暴走するガン

今回は「暴走するガン」というテーマです。

 

 

 

治療を始めた患者さんが早死にする原因は、手術の合併症や抗ガン剤の副作用であることを見てきましたが、もうひとつ重大な原因があります。

 

それは「ガンの暴走」と呼ばれ、手術したことが「きっかけ」や「刺激」となって、「隠れて」「眠っている」「臓器転移」が目を覚まし、増殖を始めて暴れだすのです。

 

この現象が生じると、元気だった患者さんもひとたまりもありません。




<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

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手術で失われる「抵抗力」

今回は「手術で失われる抵抗力」というテーマです。
 
 
 
「乳ガン」の具体例で見ていきたいと思います。
 
女性Aさんは乳房のシコリに気づいた後、1年近くそのままにしていましたが、シコリは格別大きくならなかった。
しかし、家族の勧めで病院へ行ったら「乳ガン」宣告。
その結果、乳房だけではなくその裏側にある「大胸筋」まで切除する「ハルステッド手術」が実際されました。
 
その傷がようやく癒えたと思ったら、ポツポツと腫瘤が出始め、術後半年で「局所再発」が起こりました。
そして、他方で肺や肝臓に転移が出現して急速に増大し、手術から1年で死亡しました。
 
 
●なぜ、手術したのに局所に再発するのか?
 
その理由の1つは、手術で正常組織の「ガンに対する抵抗力」が失われるからです。
 
乳ガンでは乳房と胸壁(肋骨)の間に「大胸筋」という筋肉があり、乳房に生じた「ガン」が胸壁に侵入(浸潤)するのを防いでいます。
 
そして、ハルステッド手術では乳房と一緒に大胸筋が切除されるので、ガン細胞が胸壁に潜り込む機会(チャンス)はなかったはずです。
 
それなのに、胸壁に再発が生じたのは血管内に「ガン細胞」が存在し、手術時に血管がメスで切られてガン細胞が血管の外に出て、胸壁の傷口に取り付いたからです。
傷口は正常組織の「ガンに対する抵抗力」が、メスで切られたことにより、破綻しているのでガン細胞が取りつきやすいわけです。

 
 
●では、血液中のガン細胞とは何か?
 
ガン細胞が他の臓器に転移するときは、
①「ガン初発病巣」からガン細胞が離れて、
②血管に入って血流に乗り、全身を巡ります。
③そして、標的となる(肝臓や肺などの)臓器の所まで来たら、血管の外に出て、
④細胞分裂を開始し、「転移病巣」を作る
という段階を踏みます。

 
これら①〜④までのどこに障害があっても、転移病巣は形成されません。
ことに、ガン細胞が血液中に存在するけれども、それ以上のことは起こらないというケースは数多く見られます。



<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

延命効果

今回は「延命効果」というテーマです。

 

 

 

ガンを治すことができず、症状緩和にも不適当となると、抗ガン剤に期待されるのは「延命効果」です。

 
 

抗ガン剤が使われる場面は2つあります。

①「補助化学療法」:ガンを切除する前か後に実施する抗ガン剤治療。

②「抗ガン剤単独治療」:ガンが臓器に転移していることが明らかな場合では普通手術は行われず、抗ガン剤単独治療となる。

 

どちらも、延命効果を立証するには「比較試験」が必要です。

患者(被験者)を何千人と集め、抗ガン剤を使うグループと使わないグループに分け、生存期間を比較するのですが、そういう比較試験はほとんど行われず、存在しても信頼できるものは極めて稀です。


 

ところが、近年信頼できそうな比較試験により、乳ガンに補助化学療法をしても、延命効果が見られなかったという結果が出ました。

 

臓器に転移していることが明らかな場合の「抗ガン剤単独治療」についても、比較試験が実施されること自体が稀です。

 

乳ガン、卵巣ガン、肺の小細胞ガンのように「有効率」が高くて、臨床現場では抗ガン剤が使われているガン種でも、「無治療グループ」と「抗ガン剤グループ」を比べた試験が実施されていないのです。

 
 

しかし、抗ガン剤には命を縮める副作用が多々あるので、延命効果の有無はきちんと確認する必要があります。

 

とはいえ、比較試験がないので次善の策として、抗ガン剤がなかった時代の乳ガン患者の生存期間と近年に抗ガン剤治療を受けた患者の生存期間を比べて見ました。

 

すると、抗ガン剤治療がなかった時代の患者の方が近年の患者より、生存期間が長かったのです。

 

近年の患者では、抗ガン剤が使われるほど生存期間が短くなっています。

つまり、抗ガン剤には「延命効果」ではなく「縮命効果」があるわけです。




<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

症状の緩和効果

今回は「症状の緩和効果」というテーマです。

 

 

 

痛み、神経障害、出血による貧血などの症状が生じ、クオリティ・オブ・ライフが下がっているケースでは、抗ガン剤によって症状が軽減される可能性はあります。

 

ガンが縮小すれば、症状の緩和効果が見られるのは当然のことです。

 
 

問題は、ガンの縮小効果が低く、そのため緩和効果が得られるケースが少ないことです。

半面、吐き気、全身倦怠感、口内炎、手足の痺れや痛み、胃腸障害などの副作用は全員を襲います。

症状緩和効果が見られない人にとっては、副作用は損ですし、症状が緩和した人にとっても副作用で苦しんだら得策なのかどうか疑問です。

 

症状緩和のためには、放射線治療の方が適しています。

ガンを縮小させる力は抗ガン剤よりも放射線の方が強く、照射していない部位に副作用を生じさせることがないからです。

 



<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

ガンを治す効果

今回は「ガンを治す効果」というテーマです。
 
 
 
抗ガン剤に一番期待されるのは「ガンを治す」ことだと思います。
 
この点、白血病や悪性リンパ腫など「血液ガン」では抗ガン剤で治る可能性がある「ガン種」があります。
しかし、胃ガンや肺ガンなど「固形ガン」は抗ガン剤では治らない。
それがガン治療医たちの共通認識です。
 
でも、疑問がわくことでしょう。
固形ガンでも抗ガン剤の後に、再発なく長生きしている人がいる。
そういう体験談を新聞やネットで見た。
それは治ったということではないのか、と。
 
しかし、医学界ではそのような個々のエピソードはガンが治るという証拠にならないと考えられています。
理由の1つは、何も治療しなくても自然に転移が消えることがあるからです。
 
また、特定のエピソードを強調すると同じように治療された患者たちが辿った運命が不明に終わります。
 


<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

ガンの縮小効果

今回は「ガンの縮小効果」というテーマです。

 

 

 

医師に「抗ガン剤は有効だ」と言われた場合、人によって理解の仕方が違います。

それが、抗ガン剤治療を受けるか否かに結びつきますので、「有効」の意味を整理します。

 

 

[ガンの縮小効果]

医学界で「抗ガン剤が有効」というのは、「ガンが治る」とか「延命する」ことを意味しません。

ガンが一定程度縮小すれば「有効」なのです。

 

つまり、「ガンの直径」が抗ガン剤によって30%以上縮んで「70%未満」になると「有効」と判定されます。

 
 

そして、全患者に占める「有効」判定の患者割合が「有効率」です。

有効率は「ガン種」によって異なります。

乳ガン、卵巣ガン、肺の小細胞ガンでは6割以上の有効率を期待できますが、胃ガン、大腸ガンなど多くのガン種では13割程度です。

 

抗ガン剤の量を増やし、投与する間隔を短くすると、抗ガン剤治療の「強度」がアップするため、有効率を5割以上にすることも可能です。

しかし、「強度」を強めると副作用が強くなり、それによる死者も増えます。

そのため、抗ガン剤に真に期待される諸効果が得られるかどうかは別問題です。

 





<参考文献>
もう、がんでは死なない ~二人に一人ががんになる時代の最高の治療法~
(マガジンハウス・2020)
著者:近藤誠

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