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誤診が多い、胃とみぞおちの痛み
今回は「誤診が多い、胃とみぞおちの痛み」というテーマです。
「みぞおちの痛み」には注意が必要です。
まずは、みぞおちにある内臓の位置関係を説明していきます。
みぞおちの皮膚の下には、まず肝臓があります。
その裏(背中側)には、胃と十二指腸があり、その奥に膵臓が位置しています。
また、肝臓に近い胆嚢と胆管の痛みは、みぞおちに放散(響く)します。
こうした特徴から、他の医療機関から転院してくる患者さんの中には、次のようなケースが見られることがあります。
①カメラで異常はないと言われたが、みぞおちの痛みが強く来院。
腹部エコーで、胃の裏の膵臓に進行性膵臓ガンが見つかった。
②処方された胃薬を飲んでいても、症状が改善せず来院。
腹部エコーで確認すると胆石が胆嚢にあり、胆嚢炎を起こしていた。
胆嚢炎の痛みはみぞおちに響くため、患者は「胃が痛い」と誤解し、医師もそれに気づかなかった。
③胃潰瘍ではないかと診断されたが、薬を飲んでもみぞおちの痛みが改善せず来院。
腹部エコーを行うと、肝臓に直径8センチの肝臓ガンが見つかった。
胃の前には肝臓が位置しており、肝臓の腫瘍によってみぞおちが痛むことがあるので注意が必要。
このように、みぞおちの痛みには危険な誤診が多いのです。
「みぞおち=胃」という思い込みを捨てることが肝要です。
なぜなら、みぞおちの痛みは100%胃の痛みとは限らないからです。
みぞおちの痛みは、「胃」の痛みとして本人には認識されます。
しかし、胃の周りにはいくつかの臓器が入り組んで重なり合っていることを忘れてはいけません。
胃カメラによる検査で異常がないのに改善しない人、胃薬を服用しても軽快しない人は、胃以外の病気を疑って、腹部エコー検査を希望してほしいのです。
さらに万全を尽くすなら、エコーよりも死角の少ない、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)検査で胃の周辺臓器の精密検査を受けることです。
<参考文献>
医者が患者に教えない病気の真実
(幻冬舎・2013)
著者:江田証